2026年09月10日
昨年とは打って変わって、東京では今年の夏は比較的過ごしやすかったですが、地震、豪雨などの災害も多くみられました。
日頃の災害への備えや、危ない時は車で外出しないなど今まで以上に注意して過ごさないといけないと感じています。
さて、今回は、シリーズとして製造に使用するプラスミドDNAに関して書かせて頂こうと思います。
AAVベクターやレンチウイルスベクターの製造では、培養条件やトランスフェクション方法、精製工程が注目されがちです。しかし、製造の出発点となるプラスミドDNAの品質が不十分であれば、その後の工程をどれだけ最適化しても、十分な収量と再現性を得ることはできません。
ウイルスベクター製造に用いるプラスミドDNAは、単に「目的の配列が入っている」だけでは不十分です。配列の正確性に加え、スーパーコイル比率、純度、エンドトキシン、宿主由来ゲノムDNA・RNA・タンパク質、残留抗生物質、無菌性などを適切に管理する必要があります。

プラスミドDNAの品質が影響する3つのポイント
1.トランスフェクション効率とベクター収量
スーパーコイル型プラスミドは、開環型や直鎖型と比較して細胞への導入効率が高く、一般に良好な遺伝子発現が期待できます。一方、プラスミドの構造が不均一であったり、不純物が多く含まれていたりすると、トランスフェクション効率が低下し、ウイルスベクターの収量や力価に影響します。
特にAAVベクターでは、複数種類のプラスミドを一定の比率で細胞へ導入する必要があります。いずれか一つのプラスミドに品質上の問題があるだけでも、カプシド形成やベクターゲノムの封入効率が低下し、空カプシドの増加につながる可能性があります。
2.細胞への毒性と工程の再現性
エンドトキシン、宿主由来成分、残留溶媒などの不純物は、製造細胞にストレスを与え、細胞生存率や生産性を低下させる要因になります。
また、プラスミドの品質がロットごとに変動すると、同じ細胞、同じ培地、同じ製造条件を用いても、ベクター収量や品質が安定しません。研究段階では許容できた変動が、スケールアップやGMP製造への移行時に大きな問題となることがあります。
3.臨床開発への移行可能性
研究用プラスミドで得られた製造条件を、そのまま臨床用製造へ移行できるとは限りません。使用する原材料、製造方法、試験項目、記録、変更管理、トレーサビリティなど、臨床開発では研究段階とは異なる管理が求められます。
さらに、AAVのITR配列やレンチウイルスベクターの反復配列などは、培養・製造過程で欠失や変異が生じる可能性があります。そのため、目的配列だけでなく、ベクター製造に重要な配列が正しく保持されていることを確認する必要があります。
研究初期から「将来の製造」を見据える
初期研究では一般的な研究用プラスミドを使用し、非臨床試験の直前になって高品質研究用やGMPグレードへ切り替えるケースがあります。しかし、この切り替えによって、収量、力価、品質特性が変化し、工程条件の再検討が必要になることがあります。
将来、非臨床試験や臨床試験への移行を想定している場合は、研究初期から次の点を整理しておくことが重要です。
