GMP製造を見据えたバイオ医薬品の研究開発

2021年07月26日

昨年1月に武漢で新たなウイルス感染のニュースが流れて1年半、mRNAリポソームのCovid-19ワクチンがファイザー、モデルナから流行から9ヶ月余りで開発されて年末には実用化されました。

これまでのような弱毒化ウイルスワクチンではあり得ないスピードです。

それも安全保障上の問題として位置づけされているからでしょう。

感染症ではないですが、メガカリオンというベンチャーの研究に米国防総省が注目して「兵士の止血に使いたい。実用化はいつか?」と聞かれたと新聞に載っていました。

日本発の技術ということで国の意向で断ったとのことでしたが、米国では医療も国防の一環として見ていることが分かるエピソードです。

さて、今回コロナウイルスワクチンに使用されたmRNAリポソームですが、メディリッジでも癌治療での遺伝子治療法として注目し原材料の製造に着手し始めていました。コロナの感染症ワクチンで健常人に先に使用されたわけですが、癌に応用する時の抵抗感が少し薄れるかなと思っています。

 

前置きが長くなりましたが、本日は、GMP製造を見据えたバイオ医薬品の研究開発というテーマでお話ししたいと思います。

臨床基礎研究の実用化の先についての出口を意識する必要があるというようなお話です。

メディリッジでは、バイオ医薬品原料の研究開発から医薬品までの受託製造およびウイルス等安全性試験などの受託サービスをワンストップで提供しています。

また、バイオ医薬品製造等のコンサルティングも実施している関係で、機能性の抗体やタンパク質を見つけたので、バイオ医薬品として治験薬GMP製造をして欲しいというお問合せを頂くことが時々あります。お問合せを受けてお話しをお伺いすると、「基礎研究と臨床へ持っていくための応用研究」の間に考え方のギャップがあると感じることが多々ありました。

その一例として下記のケースを挙げさせて頂きます。

タンパク質医薬品の一例

GMP製造にもっていくことを前提として、「用途は?現在の状態は?・・・」と質問をするうちに、「タンパク質にhis-tagを付けて発現させているので、Niカラムでアフィニティ精製をしたい。細胞の培養とアフィニティ精製はGMP下でお願いしたい。」というご依頼だったりすることがあります。

何故tagを付けたタンパク質をGMP製造へともっていきづらいのか?

タンパク質を製造する場合には、最終的にはtagを外すことになりますが、tagを外すには切断サイトを入れてプロテアーゼなどの酵素で切断するのが一般的です。

Tagが外れても酵素が残ってしまいますので、残存している酵素や不要となったtagをまた精製で除去する必要がありますし、残存している酵素や不要となったtagがどれだけ残存しているか、残存した酵素を含む不純物が人体に影響を及ぼさないかを検査をしてバリデーションをする必要があります。

加えて、研究室レベルで少量使用する分には良いのですが、製造レベルでプロテアーゼを使用するとなると相当な高額になってしまいます。

というようなことから、最終的にバイオ医薬品へと持っていく場合は、Tag付きのタンパク質で後々の精製用に抗体を作製しておいて、タンパク質の実製造はTagを付けないで精製するような設計をお勧め致します。

 

今日は、タンパク質医薬品を一例に考え方についてお話させて頂きました。

これからも少しずつ臨床関連で研究される先生方のお役に立ちそうな情報をお伝えしていければと考えています。