セルバンクシステムとは

2021年10月11日

10月に入って、コロナの感染者の収束し、長かった緊急事態宣言も解除されて、内閣総理大臣も岸田さんに代わり、そして、ノーベル物理学賞を日系アメリカ人の真鍋叔郎先生が受賞致しました。

この所の変化が、長かった緊急事態宣言での閉塞感から空気を変えてくれるといいなと思います。

今日は、セルバンクシステムについてお話をさせて頂きたいと思います。

1.マスターセルバンク(MCB)とワーキングセルバンク(WCB)

バイオ医薬品の製造では、哺乳動物細胞や大腸菌などの細胞を使用して抗体やタンパク質を生産します。

「いつも同じ品質」で「安全性が保証されている」細胞を用いることで、使う細胞由来の感染リスクなどを低減することができます。

そのためには、セルバンクシステムを使って原材料としての細胞を管理致します。

このセルバンクシステムを採用することによって「特性解析された同一の出発原料の細胞を全製造ロット」に使用できます。

セルバンクシステムについては、国際的なガイドラインがあり、ICHQ5Dに定められています。

セルバンクシステムのうち、継代数の低いオリジナルに近い細胞で作製したセルバンクをマスターセルバンク(MCB)と呼びます。

実際に製造に使う細胞は、MCBから更に作製したワーキングセルバンク(WCB)の細胞から使用するのが一般的です。

2. セルバンクの試験

MCBは、一般的には200400本作製し、その中からWCBを同じくらいの数を作製します。

作製したMCBWCBの特性解析を実施しておくことによって、いつも同じ品質の細胞を使用することが可能になります。

下記に抗体製造をするときのMCBの試験項目を一例として記載します。

 

表 セルバンク試験項目(抗体製造用のCHO細胞)

試験項目 試験方法概要 MCB WCB

ウイルス否定試験

ハムスター抗体産生試験

細胞接種試験

動物接種試験

卵接種試験

乳のみマウス接種試験

ウイルスの各種試験 ×

レトロウイルス否定試験

XCプラーク試験

S+Lフォーカス試験

電子顕微鏡観察(TEM

逆転写酵素活性試験

トリチウムチミジン取込試験

レトロウイルスの各種試験 ×
無菌試験 細菌・真菌等の試験
マイコプラズマ否定試験 マイコプラズマの試験
形態観察試験 参照写真との比較
増殖試験 倍加時間比較
アソエンザイム分析 電気泳動 ×
塩基配列確認試験 cDNAシークエンス解析 ×
コピー数確認試験 サザンブロット法
抗体産生確認試験 所定条件下での培養
抗体のサブクラス ELISA測定 ×
精製抗体の同定 ペプチドマッピング ×

上記が、CHO細胞を抗体産生用の宿主としたMCBおよびWCBの試験項目です。

MCBですべての試験項目を実施していれば、MCBから作製したWCBではすべての試験を実施する必要はありません。

宿主が異なる場合や、産生するタンパク質等が異なる場合などは、それぞれ測定すべき項目が変わって来ます。

MCBWCBを製造したいというご要望がありましたら、メディリッジにお気軽にお問い合わせください。